31年ぶりに住宅地価上昇の報道に違和感を覚えます。
実務で、東京の不動産流通業(仲介業の別名)に携わっていると、31年ぶりに住宅地価上昇を解説する薄くて浅い報道内容に違和感を覚えてしまいます。
もちろん、経済ですからあらゆる相関関係が働いており、私の見た角度が一様でしかないと思いますが、この角度からはこう見えているということだけでも、ひとつの参考になればと掲載させて頂きます。
一部の記事では、コロナ禍によるテレワークで東京23区の人口が減少に転じたことで都心に近い郊外での地価が上昇したように解説していましたが、人口減に大きな影響を及ぼしたのは、単身者か子なし世帯または未就学児以下の世帯です。
小学生以上の子供がいるファミリーは、学校の関係や友人関係が影響して域内から動けないでいます。
また、これらの世帯の多くは、将来の家族構成が見通せない転居=購入ではないので、郊外の賃料を引き上げたに過ぎません。
逆に、都心では1ルームの空室率が上昇して、賃料も下落傾向にあります。
これには、コロナ禍での採用枠の縮小や大手法人による東京オフィス集中の見直しも関係しています。
東京近郊の地価が上昇した理由とは
それでは、なぜ東京近郊の地価が上昇したのでしょうか?
多くの場合は、そもそもその地域にいた世帯がテレワークで共働きするために、広めの家を求めたことによります。
一次取得であれ、買い換えであれ、金融緩和の低金利と住宅ローン減税などの好機に合わせて活発に取引がされた結果と言えます。
さてさて、もう一方の都心部は、なぜ人口流失しても地価が下がらないのでしょうか?
要因はいくつかありますが、以下の2つは地価の大きな支えになっています。
(1)パワーカップルと低金利による住宅予算の高額化
(2)2022年は円安イヤーとして海外資本の流入
このまま地価は下がらないのか?いつ下がるのか?と聞かれることが多いのですが、「それは神のみぞ知る」とも言えないので、私なりの見解をお答えするようにしています。
まず、地価が下がらない要因としては、貨幣価値の下落によるインフレの維持が挙げられます。つまり経済は悪くなっても一定のインフレが続くので地価は下がらないという可能性があります。
まさに円安は、円の価値が低いことで海外資本を呼び込んで下支えする要因を作っています。一部の報道では、ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、香港などの主要都市の中で東京は最低レベルにあり、実際に比べると地価が1/3や1/4程度になっているそうです。
では地価が下がる要因は?
逆に地価が下がる要因は、ズバリ「金利」です。
金融緩和が終焉を迎え、一定のニュートラル期間を経たのちに金利を上昇に向ける日が来ます。
金利が上がると、ほとんどの取引が借入によって購入される不動産は、間違いなく下がります。
さらに、他の円建ての資産運用では、金利上昇がプラスに作用するため、現物不動産に投資をする必要性がなくなってきます。
2023年春の黒田総裁の任期満了によって、どのような政策転換があるのか?
そのインパクトはどのくらいなのか?
既存で、変動金利の有利子負債を持つ方は、注視しておく必要がありますし、住宅ローンで言えば固定金利への変更も検討しておくべきでしょう。